松平定信の社参と神号額

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みたまのふゆ第99号(令和7年11月23日発行)より

松平定信の社参と神号額

老中松平越中守定信は寛政五年(一七九三)に当社に参拝しました。
その前年にはロシアのラクスマンが根室に来航するなど、異国船警備の対策が急務とされる時局であり、江戸湾から伊豆・房総の海岸線の視察をするなかでの社参でした。
視察には画家の谷文晁が同行し、沿岸の風景を記録しましたが、これが「公余探勝図」といふ画帳となり、国宝指定されて、東京国立博物館に所蔵されてゐます。
この中に「武州金澤昇天山九覧亭旧跡眺望」と題して金沢八景の絵も残ってゐます。

定信はこの出張中に老中を免ぜられ、文化九年(一八一二)には隠居して楽翁と号しましたが、同十四年(一八一七)に自ら揮毫した「瀬戸之神社」の神号額を奉納してゐます。
「国家鎮護」の祈りを籠めての奉納であったでせう。
この額は永らく拝殿向拝に掛けられてゐましたが。現在は淑月館展示室にて御覧いただけます。 
また「集古十種」といふ全国の文化財の記録も編集しましたが、これにも当時の瀬戸神社境内にあった梵鐘の銘文の拓本が掲載されてをります。

神棚の祀り方と「いのり」
 大きな「いのり」
   神宮大麻を祀る意味

「おふだ」と「お守り」

毎日神社にお参りする日参を続けてをられる方もいらっしゃいます。
しかし多くの方は日々のお参りはできません。

そこで家庭に神棚を設けて、神社のお札をお祀りし、そこに手を併せて祈ります。

更には、日常的に身に着けて携帯し、「いのり」を持続することができるやうにするものが「お守り」です。
「お守り」の袋には小さなお札が封入されてゐますので、そこに「いのり」をこめるのが「お守り」を持ち歩く意味なのです。

「合格」とか「交通安産」「病気平癒」など、お守り袋には区別がありますが、飲めば効き目のある薬のやうに、持ってゐれば効果があるといふのではありません。
お守りを身に着けることで「いのり」を持続することに、その「いのり」があってこそ「合格」や「交通安全」そのほかの御利益に繋がるものとなるのです。

家族がそろって一家の「いのり」を共有するのが「神棚」のまつりであり、個人で「いのり」を携帯するのが「お守り」なのです。
「神棚」にも「お守り」にも神社のお札が祀られてゐるのです。

氏神様と神宮大麻

神棚には氏神様のお札と、神宮大麻とを併せてお祀りするのが基本とされてゐます。

氏神様は産土神(うぶすなのかみ)とも云はれ、皆様がお住まいの地域の神様です。
(語源的には氏族の祖先神でしたが、村落共同体の守護神を氏神と称するやうになりました。)

神棚への「いのり」は家族一人一人の「いのり」を家庭で共有することになります。

個人個人の健康や安全は家族全員にとっても家庭の幸福の基盤です。
個人の希望や努力が稔りあるものとなるのは家族一同にとっても大いなる喜びです。
そこにむけての「いのり」を共有することを具体化するのが神棚への「いのり」と言へます。
個人の「いのり」が叶へられることは家族にとってはもちろん、地域の社会にとっても望ましいことです。

商売繁昌の「いのり」が叶へられることは、自分だけが儲かるといふのではなく、取引先や顧客なども含めての繁栄でなくてはなりますまい。

交通安全は、自分だけが安全だったのではなく、社会全般にとっての安全でもあります。

私たちの個人の「いのり」は一見してエゴイズム的な「いのり」に見えるかもしれませんが、それが家庭からさらに周辺の社会と共有されることによって、より大きな「いのり」となって、御神慮にも叶ふものとなってゆきます。

地元の産土神・氏神様のお札を通して、個人や家族の「いのり」は地域社会の共有のより大きな「いのり」にパワーアップされるのです。

さらにそこに神宮大麻も祀られてゐると、その「いのり」は地域社会の枠を超えた国家的・世界的な規模の「いのり」へとバージョンアップすることができるわけです。

神宮大麻とは?

神宮大麻は「じんぐうたいま」と読みます。
伊勢の神宮のお札です。
日本国中で「いのり」を共有する「総氏神」とも云はれるやうに全国で頒布され祀られます。

江戸時代には伊勢の御師と呼ばれる神職が全国に配札してゐました。
その当時は「お祓い大麻」とも呼ばれました。

神社に正式参拝するときに、麻を束ねたものを串の先に付けた「大麻」(「おほぬさ」と読みます」)を振ってお祓ひを受けた経験がおありでせう。

御師が伊勢で大祓の祝詞を奏上し、その「いのり」を込めた祓のしるしの麻を封入したお札が「お祓い大麻」でした。
この伝統から、神宮のお札を「大麻」と称するのです。

天皇陛下の「いのり」

伊勢の神宮は、日本国中の総氏神ともされますが、その根本的なご性格は、天照大御神からお授かりにになった御鏡を歴代の陛下が変わることなく祀り続けてこられた天皇の祭祀を主体とする神宮であるといふことです。
ですから神宮の祭祀は天皇の祭祀であり、「いのり」は天皇の「いのり」であります。

天皇の「いのり」は公平無私の世界の平穏、人類の福祉に及ぶ広範無邊の大きな「いのり」であらせられます。
神宮大麻には、この天皇の「いのり」が根底にあるお札を私たちが分け戴く意味があります。

家庭の神棚に、神宮大麻が祀られるとき、私たちは天皇陛下の「いのり」を共有することとなるのです。

個人的なエゴに陥りやすい小さな「いのり」を、広大な、大きな「いのり」としてゆくことで、私たちの暮らしをより豊かな実りあるものとしてゆきたいものです。

第二十回目の
 こども宮相撲大会
  高砂部屋の力士を迎えて

恒例の行事となったきた「こども宮すもう大会」も、一時コロナ禍での中断がありましたが、今年は第二十回目となり、去る六月七日に行はれました。

晴天に恵まれ、九〇名のちびっ子が元気に取り組み、境内は歓声ににつつまれました。

特に今年の大会には、高砂部屋の力士と行事さんが参加してくだされ、模範演技だけでなく子供達とふれあい、楽しい時間を過ごしてくださいました。

参加いただいたのは、朝興貴、朝志勇、朝大洞の力士三名と行事の木村悟志さんです。

土俵作りは瀬戸神社奉仕会の「玉垣会」の皆さんだ取り進め、横浜金沢八景ロータリークラブが共催、金沢八景共栄会の協賛もあり、また学生会HAKKEY+の皆さんもお手伝ひくださって例年の運営がされてゐます。

ご協力を感謝いたします。

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